聖書を読み直す?
「聖書を読み直す」という言い回しをときどき目にする。「これまでは、このように教えられて来たけれど、聖書はほんとうにそういうことを教えているのかを読み直すのだ」というのである。
こういう企ては、正しく聖書がほんとうに語っていることに迫る場合と、かえって聖書がほんとうに語っていることから遠ざかってしまう場合がある。後者の場合というのは、「聖書を読み直す」という動機が、今の時代の思想とか風潮などに調子を合わせたいということである。こういうことは、古代の教会からありがちだった。グノーシス主義というのは、聖書をギリシャ宗教思想の二元論に合わせて解釈しようとしたものだった。近代のシュライエルマッハーの『宗教論』は、著者が最初の方で述べるように、当時の知識層に受け入れられるようにと意図して聖書を再解釈したものであるが、その「宗教」は汎神論になってしまっている。先の戦中に流行した「日本的基督教」も同じである。